学会についてAbout Us
ごあいさつ
共同代表理事佐藤 等(左)井坂 康志(右)
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法人化にあたって
ごあいさつ
2005年11月19日に創設され18期間、任意団体として活動してきた「ドラッカー学会」は、2023年12月5日にNPO法人ドラッカー学会を設立し、2023年12月5日から2024年3月31日(NPO法人ドラッカー学会第1期)を移行期間とし、第19期の活動からNPO法人に活動を移行することになりました。
2005年11月19日の創設以来、会員の皆様、役員の方々、そのほか活動を支援していただいた関係者各位にあらためて感謝申し上げます。引き続き、新生NPO法人の活動に対してもご理解とご協力いただきたく、お願い申し上げます。
継続と変革
ドラッカー学会は、法人化を契機に18期間の活動の継続の上に、新たな革新を重ね、新しいステージに進みます。
非営利組織こそコミュニティである。それは一人ひとりの人が成果をあげ、自己実現することを可能にする。ボランティアは、報酬を得ていないかからこそ自らの貢献から満足を得なければならない。
『非営利組織の経営』
ドラッカー学会は、2005年の創設から18期間の会務のすべてを会員各位の真摯なボランティア活動によって担われてきました。具体的には、年次大会・学術大会を毎年開催し、学会誌『文明とマネジメント』を発刊するなど、質・量ともにその活動の成果は、大いに評価されるべきものです。また、ドラッカーが示すように、その過程で活動に関与した会員各位は、自らの貢献から満足を得、自己実現の1ページに深く刻まれたものと確信しています。
このような実績は、NPO法人にも引き継がれるべき、わたしたちが醸成した優れた組織の文化です。
社会生態学の目的は、継続や維持と、変革や創造とのバランスを図ることである。
『すでに起こった未来』
社会生態学はマネジメントの母体です。ドラッカーは、社会のみならず社会の道具である組織も同様に、継続のために変革が必要であると教えています。わたしたちは、NPO法人化をもって変革と創造の機会としなければならないと考えています。
NPOは、特定非営利活動促進法によって運営されますので、一層のガバナンスの充実が求められます。第一弾として、今般「理事候補者の公募」を行うこととしました。徐々に充実を図っていく所存です。
また賛助会員を設け、団体として会員になることを可能としました。これによって今後、企業等との交流をどのように進めていくかの議論が活発化するものと期待しております。
さらに特定非営利活動に係る事業の他、「その他の事業」として①ドラッカー思想の実践に関わる助言およびコンサルテーション、②ドラッカー思想の実践に関わる講座の開催を定款に定めました。事業領域を拡張することで、さらなる社会への貢献機会が増えるものと考えております。
ドラッカー学会を発展的に継続させるため、会員各位とともに、これまでの組織の文化の上に新たな活動を重ね「ドラッカー・マネジメント」の深化と発展を図っていけることを念願しております。
本学会共同代表佐藤 等
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学会の役割はマネジメントをどのように進化・深化させていくべきかを発信していくこと
私たちは、「断絶の時代」という転換期を経て、再び「継続の時代」の入口に立っています。『断絶の時代』(1969)は、「継続の終わり」という章で始まります。ドラッカーなら今を「断絶の終わり」もしくは「継続の始まり」と表現するでしょう。われわれが転換期にあることは明らかである。もしこれまでの歴史どおり動くならば、二〇一〇年ないし二〇二〇年まで続く―『ポスト資本主義社会』(1993)
コロナ禍やウクライナ紛争などによって20世紀に由来するいくつかの古い世界観は一掃され、新しい姿を見せつつあります。新たな「継続の時代」の入り口にあって私たちが寄って立つべき新しい世界観や価値観は何でしょうか。
ドラッカー学会のジャーナルが『文明とマネジメント』を標榜している意味もまさにそこにあります。これから人類が築き上げようとしている文明の下、社会をより良く機能させるためにマネジメントをどのように進化・深化させていくべきかを発信していくことは、学会の役割であり課題であると考えています。
ドラッカーは、文明とともに文化というコンセプトを用います。
マネジメントが、それぞれの国に特有の文化を活かすことに成功しなければ、世界の発展は望みえない。これこそわれわれが日本から学ぶべきことである―『マネジメント』(1973)
もう一つの課題は、「それぞれの国に特有の文化」をマネジメントに活かすという視座を認識することです。長らく閉塞感の中にある日本を脱する大きなきっかけになる可能性を秘めています。
とりわけドラッカーは、日本の文化、世界観、美意識を高く評価し、世界に発信しています。日本の強みをマネジメントに活かすための知見を発信することも学会に期待されていることではないでしょうか。
「マネジメントとは、課題によって規定される客観的な機能である」といいます。課題を共有し、社会に有益な情報を提供する活動とは何かを問い続け、会務を担っていく所存です。
共同代表理事
ものつくり大学教養教育センター教授
井坂康志-
激変の時代、いっそうドラッカーの力が必要とされる
このたび共同代表という重責を仰せつかりました井坂康志と申します。
私とドラッカーとの内的対話は20数年になります。「研究してきた」といえると格好がよいのですが、本当のところはたぶんそうではありません。
はっきり言えるのは、私はドラッカーの中に温かな励ましを感じ続けてきたことです。それが長期間にわたって、私が彼から離れられなかった最大の理由のように感じています。そして、おそらく、ドラッカー学会の会員の皆様、あるいは世界中でドラッカーに対して共感を寄せる多くの方々の気持ちも、程度の差はあれ、私の感じるところに近いのではないかと想像いたします。
私自身、人生のそれぞれの局面でふさわしい助力の手を差し伸べてもらっているような感覚を幾度となく抱いてきました。苦しい時、孤立無援に感じる時、未来が見えない時、ドラッカーの言葉にどれほど救われたことでしょうか。今にして、初代代表である上田惇生さんが、「それぞれのドラッカー」と言われていた真意が、少しだけわかってきた気がいたします。
激変のカタログのような現代、いっそうドラッカーの力が必要とされています。
ドラッカー自身の思いを受け、その名を冠した学会。小なりといえども、大きな意味をもっています。温かな励ましの知的共同体として、様々な方が手をつなぎ合える、そんな場にしていきたい。心通わぬところに、真の知的交流などあるはずがないからです。
そんなドラッカー学会は皆さんの力を必要としています。
よろしくご指導いただければ幸いです。
前代表理事
明治大学法学部教授阪井和男-
偉大な社会生態学者から学ぶこと
ドラッカーというとマネジメントが著名ですが、彼は自身を社会生態学者と呼んでいました。社会生態学者とは、自然生態を観察するように、人間社会を全体からありのままに観察し、その結果を伝える人のことです。
彼が観察から見出したコンセプトは知識社会や知識労働、ネクスト・ソサエティ、セカンドキャリアなど多くありますが、いずれもが私たちが生きる現代においても刺激的であるとともに、重要な学びの補助線を提供してくれるものばかりです。
ドラッカー学会は、万人に開かれた学びと実践の共同体でありたいと願っています。ご一緒できることを楽しみにしております。
元代表理事
立命館大学名誉教授三浦一郎-
偉大な思想の灯火を消さない
ドラッカーをアカデミックに評価するのは至難である。だからこそ、研究し続けなければならない。かつて西田幾太郎、田辺元といった大物哲学者に並び、和辻哲郎という異色の倫理学者がいた。和辻は『風土』や『古寺巡礼』などの随想風の作風で知られる。
彼は学者というよりも、物書きだった。物事の本質を直観し、かつアナロジカルにとらえる異能の持ち主だった。確かに和辻はアカデミアの人間ではなかったかもしれない。だが、彼の高度の直観と認識作法は明らかに偉大なる研究者のそれだった。それをきちんと評価し、研究し続けることが大切である。
ドラッカーもまた日本風に言えば、「見立て」の天才だった。見立てとは論理よりも直観の作業である。見立ては古寺の庭園や古典芸能、和歌や俳句に多用される日本の風土に根ざす能力である。だが、そのようなあまりに巨大なパターン認識は読み物としてはおもしろくとも、「学問ではない」というのがこれまでの評価だった。それは彼自身が反アカデミックな知的作法を特徴としていたためである。
本来、反アカデミックのドラッカーをアカデミックに評価する——。実は今後の学会活動の決め手はここにあるのではないかと思っている。大事なのは偉大な思想の灯火を消さないことである。
本学会創設者
ものつくり大学名誉教授上田惇生-
文明と未来を創造するために
ドラッカーの主張のフレームワークは絵解きを必要とする。解釈を必要とする。その点を明らかにしていくことが、今後の世界の構築に大きく寄与する。本学会はドラッカーのフレームを探求しつつ、未来を創造しようとするものである。
マネジメントは未完の可能性を秘めた知識である。彼の観察によれば、社会において、生産力とイズムが一緒になると必ず悪い方向に行く。いかに善良な動機に貫かれようとも、イズムには人間社会を救済する力はない。現実に、社会主義、全体主義、そして資本主義さえもすべてうまくいかなかった。それは現実そのものを現実的に説明する力が、イデオロギーという合理主義の産物には絶望的に欠落していたからだ。
ドラッカーがマネジメントというイズムにもイデオロギーにもよることのないきわめて現実的な社会上の特質に着目したのは、当然といえば当然だった。マネジメントとは文明を創造する手段であって、機能である。手段の卓越はその成果によって測られる。
その原点を明らかにするには、深いレベルで企まれた彼の思考フレームを究明する必要がある。そこに本学会の使命がある。